極上お姫様生活―2―【完】
もう一度笑みを浮かべてから、櫻田君は行ってしまった。
遠くなる背中を見つめながら、あたしはふと思い出す。
最初に聞いた声が空耳じゃなかったとしたら。
「蒼空……って」
櫻田君はいつもあたしのことを浅村って呼ぶけど、さっきは確かに蒼空って言った……よね?
タイミングがあまりにも不意打ちで、顔がぶわわと赤くなるのを感じた。
両手で頬を押さえながらにやける顔を必死に堪える。現金すぎるよあたし。
「……心配してくれてるんだよね」
櫻田君の優しさが素直に嬉しくて胸がじわり温かくなる。
ありがとう。
深呼吸をひとつしてから、あたしは学校に向かって足を踏み出す。
逃げない。諦めない。
もう一度だけ、信じてもらうんだ。