極上お姫様生活―2―【完】
「おはよう蒼空ちゃん」
「あ、おはようございます」
いつもと同じように挨拶される。何も変わってない。
変わってない、はずなのに。
「やぎ、はら君……」
既に教室にいた八木原君を見つけ、あたしは無意識に名前を呼んでいた。
「……」
返答はない。あたしを一瞥して、すぐに顔を伏せてしまう彼。
さっき橘君があたしを冷たく睨んだけど、それよりも強く胸が痛んだ気がした。
「おはよー斎!朝から寝てんなよなー」
立ち尽くしていたあたしの横を遥登君が通りすぎる。まるで、あたしのことなんて見えてないみたいに。
「るせーな、放っとけよ」
八木原君も遥登君の声に反応しむくり顔を上げるけど、今度はあたしのことを一度も見なかった。
その後、橘君が飲み物片手に戻ってきて、至って自然に話の輪に加わる。
状況は変わることなく。
……わ、想像してたよりきついかも。
涙が出そうになるのを、唇を噛み締めてぐっと堪える。
言わなきゃ、言わなきゃ。泣くのはまだ早い。
ぎゅっと拳を握って、顔を上げる。
「話を…………聞いてもらえませんか」