極上お姫様生活―2―【完】
「なーんて。ちょっといじめすぎたか?」
頭の上から優しい声がして顔を上げる。みんなの笑顔が視界に映って、鼻の奥がつんと痛んだ。
「冗談だよ。……なぁ蒼空、お前まさか俺の言葉まで忘れちまったんじゃねぇだろうな?」
え?八木原君の言葉?
無意識に首を傾げていたらしい、八木原君はあたしの顔を見たままはぁーっと深い溜め息をついた。
「忘れちまったんなら仕方ねぇか」
「……ほんっとに何も覚えてないのなー」
みんなはあたしから離れ自席に戻っていく。……え、ちょ、ちょっと!
「え、ちょっと待って下さい!何て言ったんですか!?教えて下さいよー!」
慌てて八木原君のシャツの裾を掴み、引き寄せる。おわ、と軽く仰け反る彼に構わず、あたしはさらにしつこく迫った。
「八木原君、教えて下さい。……あたしに、何て言ったんですか?」
聞きたい。これだけは絶対。
「っ、」
だって、だってだってだって。あたしは八木原君の事が。
「……わーったよ」
観念したのか、八木原君はしぶしぶ首を縦に振りながらあたしの耳にそっと唇を近付ける。誰にも聞こえないように少し警戒しながら甘く囁いた。
え……、
「口調変わったお前も可愛くて、興奮しちゃった」