極上お姫様生活―2―【完】
「っ……!?」
バッと耳を押さえて八木原君から離れる。顔に熱が集中するのが自分でも分かった。
してやったりと、八木原君は嬉しそうに口角を持ち上げる。
「ま、そういう事だから」
追求しようと口を開けても、パクパクと声にならない。
「ちょっと斎ー、蒼空になに言ったのさ」
不機嫌そうに頬を膨らませた遥登君が、あたしの代わりに八木原君に聞く。
だけど彼は笑みを浮かべて黙ったままで、何も答えようとしない。
「……蒼空!」
焦れったく思ったのか、遥登君はくるり向きを変えてズンズンあたしに迫ってきた。
一歩後ずさるも、それは無意味で。あっという間に腕を掴まれ、ついでに顔を覗き込まれる。
「斎に何て言われたの?どうしてそんなに顔を真っ赤にさせてるの?ねぇ、どうして?」
遥登君は容赦なくあたしを問い詰める。か、顔怖い……!
「やめろよ遥登、蒼空が困ってんだろーが」
橘君が仲裁に入ってくれるものの、遥登君の勢いは止まる事を知らない。それどころか怒りの矛先が橘君に向いてしまった気がする。
「なに、じゃあ遊哉は気にならないって言うの?蒼空がこんなに頬を赤く染めてるっていうのに?」
「そうじゃねぇけど。だからって蒼空を責める理由にはならないだろ」