極上お姫様生活―2―【完】
「別に嫌なわけじゃねぇよ。ただ、その……そんな真っ直ぐな瞳で見つめられると、色々やばいんだって」
楽しそうな笑顔が、照れ隠しの笑みに変わる。
「あ……えと、」
そんなことを言われても、あたしもどう答えていいか分からなくなる。ていうか、何ですかその顔!可愛いな、もう!
「蒼空、ドア開けてくれるか?」
あたしを抱きかかえたままで両手が塞がってる彼の代わりに保健室のドアを開ける。
そこには珍しく熱心に書類に目を通している翼の姿があった。いや、珍しくなんていったら失礼だけどね……。
「なーに、仮病ならさっさと教室戻りなさいよー」
翼は顔を上げないままで、あたしたちをサボリに来た生徒だと思っているらしい。
「いや、仮病じゃねぇし。こいつ、手当してくれねぇか?」
そこで初めて翼が顔を上げた。掛けていた眼鏡をわざとらしくずらしてあたしたちを凝視する。
ばっちり翼と目が合う。と、彼女はにんまり顔を綻ばせた。
「あーら失礼。何々、どういうことかなー?」
書類をバサッと机に叩きつけた翼はあたしたちに駆け寄り、興味津々といった風に問いかけてくる。
「いやだから、蒼空が怪我したから手当―――」
「はいはい分かった分かった!ほら、ここに降ろしてあげて」
翼は興奮したように八木原君の言葉を遮り、空いてたベッドをバンバン叩く。翼に聞こえないように小さく舌打ちをして、あたしをそのベッドに降ろした。