極上お姫様生活―2―【完】
「あ、ありがとうございます」
「ん」
八木原君は短く答えて、あたしから少し離れた。その間に消毒液を持ってきた翼が、あたしの前にしゃがむ。
「はーい、痛いの痛いのとんでけー」
それ、ただの子ども騙しですよ……。と思いつつ、丁寧に消毒してくれる翼に文句は言えなかった。
手際よくあたしの膝にガーゼを当てていく。正直、痛みはとうに引いていた。
「あんたってほんとやんちゃよねー。もっと女らしくしなさいよ」
「や、やんちゃなんかじゃないですよっ」
頬を膨らまして反論するあたしを見て、八木原君が意地悪く笑ったかと思うと、
「聞いてくれよせんせー、こいつさっき俺たちにキレてさ」
なんて、あたしが一番忘れたい事を言い出す。もちろん翼が自分にとって楽しいと思うような発言を聞き逃すはずもなく。
「なにそれ面白い」
手当も放っぽって八木原君に近寄り、適当に置いてあった椅子に座らせる。
「そりゃあもう、二重人格を疑うくらいのもので」
「蒼空がそんなに変わったって事!?」
あたしが赤面を堪えられずにいる中、二人がさっきの話題で盛り上がった事は言うまでもない……。