極上お姫様生活―2―【完】
八木原君の動きひとつひとつに集中してしまう。
「ほら、おいで」
優しい八木原君の声があたしの全身を震わせる。媚薬に似た、甘い囁き。
ぼぼぼと顔を真っ赤にさせたまま、あたしは無意識に手を伸ばしていた。
その手を一度握った八木原君は、するりといわゆる恋人繋ぎってやつに握りなおす。その間も、あたしから目を逸らす事はなく。
「蒼空」
「っ、」
甘く、甘く。
そんな声で名前を呼ばれたら、もう何も考えられなくなる。瞬きさえ忘れ、あたしは恐る恐る八木原君に近付いた。
ふっと嬉しそうな笑みを漏らした八木原君に、強く抱き締められる。息をするのもままならないほど、強く。
彼の体温を肌で感じて、それだけで涙が出そうになってしまう。
八木原君がここにいる。あたしを感じてくれてる。
「やぎ、はら君……っ」
「あぁ、俺はここにいるよ。もう離さないから」
少しだけ力を抜いて、八木原があたしの肩を掴んで離れる。面と向かい合って恥ずかしくなったあたしはパチパチ瞬きを繰り返しながら俯いた。
目が泳いじゃう……。