極上お姫様生活―2―【完】
突然の電話
瞬間、唐突もなく保健室のドアが開かれる。そんな風に開けたらドアが外れるんじゃないかと心配になるほどの勢いに、あたしは肩を震わせた。
「蒼空!」
「はっ、遥登君!?」
一瞬だけ遥登君の姿が見えて、おわ、と声を出す暇もなくその影が一気に目の前に迫る。その後ろに鞄を持った橘君と櫻田君が疲れた顔で立っていた。
「よーう、蒼空。軽い怪我だと思ってたけど、相当深手だったみてぇだなー?」
「え?」
あたしの膝の怪我は全然対した事ないし、それは見た目からも分かると思うんだけど……。どうしてそんな事言うのかと問えば、橘君の代わりに櫻田君が口を開いた。
「だったらどうしてすぐに戻ってこないんだ。もう夕方だぞ」
ベッドに座るあたしの横にドサッと鞄が置かれる。
「これ、あたしの鞄……っていうか夕方って!?」
慌てて時計に目をやると、示す針は既に6時を回っていて。
「教室でずっと待ってたのにー」
あたしの腰に巻きつくように抱きついてくる遥登君が不機嫌な声を出す。
「ご、ごめんなさいっ!まさか……もうこんな時間なんて」
「随分眠ってたもんなぁ」
もっと早く起こしてくれたっていいじゃないですか!と八木原君を睨みつつベッドから降りる。
鞄を持ってきてくれた事にお礼を言ってから、あたしたちはそろって保健室を出た。