極上お姫様生活―2―【完】
みんなにペコペコと頭を下げながら叱咤すると、電話の向こうのお母さんは不機嫌な声を漏らした。
『何よ、その態度は。親に散々心配掛けさせといて』
あたしが電話に出なかった事を根に持っているらしい。今度はブーブー文句を垂れてくる。
ほんっとこの人は……せめてもう少し緊張感を持って欲しい。
「ちょっとお母さん……何か用があったんじゃないの?」
話を元に戻すために強引に言葉を遮る。と、お母さんは思い出したように声を弾ませた。
『あ、そうそう!蒼空にねっ、いいお知らせがあるのよ~!』
お母さんが心底嬉しそうにそう言うから、一体何だろうと期待してしまう。
だけど、その期待はお母さんの残酷な一言によって簡単に裏切られる事になる。
『もうすぐ日本に帰れる事になったから、あなたも戻ってらっしゃい!』
「…………え?」
戻ってこいって……お母さん、今そう言ったの?
「ごめんお母さん、何て?」
聞き取れなかったわけじゃない。聞き入れたくないだけで。
でももしかしたらあたしの耳がおかしくなっちゃっただけかも。震える手を握り締めながら、あたしは努めて平然と聞き返した。
『あら聞こえなかった?だから、また家族みんなで暮らしましょうって言ったのよ』