極上お姫様生活―2―【完】




―――やだ。





真っ先に出てきたのはそんな想いだった。


お母さんとお父さんが日本に帰ってくる事も、二人に逢える事ももちろん嬉しいに決まってる。







だけど、


この寮を出るなんて。

この学校をやめるなんて。



みんなと……離れるなんて。






「そんなの嫌だよ……っ!」


考える間もなく、あたしはお母さんに向かって泣き泣けんでいた。びっくりしたみんながあたしの様子を伺うように覗き込む。そんなみんなの顔を見たら、余計に涙が溢れ出して……。



「みんなと離れるなんて絶対に嫌!あたし帰らないから!」


『っ、蒼空―――!』




お母さんが向こうで何か言ってたけど、あたしは構わず携帯を切った。涙が止まらなくて嗚咽を漏らしながら荒い息を繰り返す。





「おい、蒼空……大丈夫かよ」


「落ち着けって」



八木原君と橘君の温かい手があたしの背中をさする。遥登君も櫻田君も困ったようにあたしの名前を呼んだ。




その優しさを感じて、あたしはみんなの手を強く握る。離れないでと、願いを込めるように。絶対に絶対に……。




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