極上お姫様生活―2―【完】
どうせなにを言ったって聞いちゃくれない。お母さんは昔からそういう人なんだから。
今までだってお母さんが我侭を言う事はたくさんあったけど、それを嫌だと思った事は一度もなかった。だって大好きだから。
だけど。
「今回ばっかりは……ちょっと許せないんです」
何よりあたしとみんなの絆をいとも簡単に引き裂こうとしたお母さんの言動が許せなかった。いくら彼らの事を知らないからって、そんなの酷すぎる。
「そーら」
八木原君はまるで、いたずらをした子どもを叱るように少しだけ怖い顔をしてあたしの頬を両手で包む。
その目にはもう、いつもの優しい彼の面影はなく。
目を逸らせば無理矢理八木原君の方を向かせられる。ピリピリとした空気に耐え切れず泣き出したい気分になった。
「お前のたった一人の母さんだろうが。もういいなんて簡単に言葉にするんじゃねぇよ」
「っ、」
「事情を知らないおはお互い様だろ?だったらなおさら、結論を出すにはちょっと早すぎるんじゃねぇのか」
八木原君を見つめたまま唇を噛む。
八木原君はいつだって正しい。正しいからこそ、あたしは余計惨めになる。
「分かってますよ……そんな事くらい」
だけど仕方ないじゃないか。あたしはそれくらいみんなが大切なんだから。