極上お姫様生活―2―【完】
みっともない自分をこれ以上晒したくなくて、あたしはみんなの間を縫って部屋を出て行こうとした。とりあえず冷静にならなきゃダメだって、頭の隅で思ってたのかもしれない。
玄関へと足を踏み出した瞬間、グイと腕を引かれ後ろに引っ張られる。
「た、橘君……っ」
橘君は何も言わずにただあたしを見据える。その真っ直ぐな瞳に思わずたじろいだ。
「お前はずっとここにいろ、って。そう優しく抱き締めてやったら満足するのか?」
「っ」
逃げる事も許されずその場にへたり座り込めば、少し距離が遠くなった八木原君に問いかけられる。あたしはその問いに答えられなかった。
図星だもの。
「だけどそれじゃ何も解決しないだろ?問題は、お前がここにいるかいないかじゃない。お前が、問題にどう向き合っていくか……なんだよ」
八木原君がゆっくり立ち上がってあたしの前まで歩いてくる。ぼんやりその姿を追いながら、彼が言った言葉の意味を理解しようとした。
「蒼空、お前がここにいたいって気持ちは痛い程分かってる。だから、お前の母さんがそれを許さないって言うなら、それは俺たちがどうにかしてやる」
八木原君の手が近付いて、そっと涙の跡をなぞる。
「怖がらなくていいから。俺たちが傍にいるから。だから……逃げんな」