極上お姫様生活―2―【完】
蒼空の涙と意志
「お母さん、さっきはごめんなさい。ついカッとなっちゃって」
目の前で蒼空が電話をかけ直す。俺たちはただ黙ってその様子を見守っていた。
「遊哉、蒼空のかーちゃんってどんな人だと思う?」
隣で遥登と遊哉がひそひそ声を潜めて話し始める。自然を装ってその内容に集中すれば、どうやら蒼空の母親について話し合ってるようで。
「そりゃあれだろ、超美人で―――」
「容姿じゃなくて中身の話をしてるんだよ!」
蒼空の母親か……。確かに興味がないとと言えば嘘になるな。
どことなく柔らかくて優しい雰囲気は想像できる……蒼空は母親似なのだろうか。
と、妄想に妄想を重ねていると、二人がにやにやと俺を見ていてドキリとする。
「そこのムッツリ湊君は一体何を考えてるのかなー?」
「っ、何だその顔は。むかつくからやめろ」
相手にするだけ無駄か。クスクスと楽しそうに笑って茶化す事をやめない二人を軽く睨んでから蒼空へと視線を移す。
俺たちに背中を向けていて、彼女の表情を伺う事はできない。蒼空の小さな背中を見つめ、やがてふと違和感を感じる。
「……?」
微かにではあるが、彼女の身体は震えている気がする。いや、それどころじゃない……もしかして。