極上お姫様生活―2―【完】
泣いてる、のか?
蒼空は背中を小刻みに震わせ、時々目の当たりに手を持っていきごしごしと擦っている。間違いない……!
「っ、」
泣いている彼女を放っておけるわけがない。
俺は遊哉と遥登を押しのけて慌てて蒼空に近寄ろうとした。しかし、この手が蒼空に触れる前に斎に掴まれてしまう。
……!!
驚いて斎へ目をやると、斎はただ静かに首を振ったまま。口には出さないものの、余計な事をするなと言っているのが分かった。
今すぐ蒼空を抱き締めてやりたい衝動に駆られていたが、グッと堪えて腰をおろす。斎の言う事は聞いておいた方が身のためだからな。
「……あいつが、自分で乗り越えなきゃいけねぇんだよ」
俺にしか聞こえないように斎が呟く。拳を固く握り、彼もまた必死で耐えているようだった。
「そうだな」
フォローするのはその後か。
蒼空が今泣いている理由は、きっと良い意味じゃないだろう。それでも俺たちは、蒼空が電話を終えるまでただ黙っているしかなかった。