極上お姫様生活―2―【完】
やがて。
「……っ、」
電話を終えた蒼空が鼻を啜りながらくるり向きを変える。その目は真っ赤に腫れ上がっていて、ギリ……、と胸が痛んだ。
黙り込んだ蒼空を見つめ、彼女が口を開くのを黙って待つ。俺と同じように斎も遥登も遊哉も蒼空を見つめ、俺と同じように誰も喋らなかった。
「やっぱりあたし…………学校辞めるしかないみたいです」
蒼空が言った言葉は俺の心を引き裂くように残酷で。受け入れたくないという思いだけが激しく主張する。
「どういう事だ?分かってもらえなかったのか……?」
「あたしの気持ちは理解してくれてるみたいですが、だからといってこれ以上寮生活はさせられないって」
ポツリ、ポツリ、重みのある蒼空の声が紡がれていく。
くそっ……!!
握った拳を床に叩きつける。どうして蒼空がこんな目にあわなくちゃならないんだ。どうして……っ!
もう一度、床目掛けて振り下ろした拳を、蒼空が両手で包むようにして止めた。涙で滲ませた瞳を俺に向けて大丈夫と笑う。
「諦めたりなんかしませんよ」