極上お姫様生活―2―【完】
「ふふ、分かりました」
蒼空が頷いてくれて安堵したのも束の間、後ろから嫌な気配を感じて振り返る。
「最初から思ってたんだよね、女の子を苗字で呼ぶのってちょっと偉そうだなって」
遥登がわざとらしく腕を組んで俺を陥れようとしていた。
「せめてさんを付けるべきだって、ねぇそう思わない?」
「え、ええと……」
ブラックモードの遥登は俺を指差しながら蒼空に近寄る。俺を嫌わせる作戦か……侮れないな。
「でも苗字呼びからいきなり名前呼びに変わるってずりぃよな、そのギャップにやられる女子が多いんじゃね?」
ずりぃとか言われても困る。俺だって俺なりに色々努力してるんだ。……そうは見えないだろうけど。
「うわーそういうの狙ってたんだ!やっぱり湊は正真正銘のムッツリだね!いや、これはむしろ天然って言うべきなのかな?」
「う、うるさいって言ってるだろ!」
ギャーギャーと騒ぎながらも時折蒼空が悲しそうな顔をするのを俺は見逃していなかった。
早く何とかしてやりたい。
それが今の俺の願いだった。
蒼空が誰より幸せになればいい、と。