極上お姫様生活―2―【完】
明け方の廊下で
散々八木原君の部屋で騒いだ後、あたしは一足先に自室へ戻った。
扉を閉めればみんなの声が聞こえなくなって静寂が訪れる。
「はぁ……」
自然とため息が零れてしまう。あたしは力なく座り込んで携帯を見つめながら、さっきの電話を思い出していた。
できるだけ冷静になって、ちゃんと気持ちを伝えようと思った。
だけどむしろ、冷静じゃなかったのはお母さんの方で。
『帰りたくないって、どうしてなの……!?』
あたしの声なんてこれっぽっちも届かなくて。
『お母さんの事、嫌いになっちゃったの?』
電話の向こうでお母さんは泣いていて。あたしは必死で涙を堪えながら説得したけど、
『許さないわ、何としてでも学校を辞めてもらいます!』
そうきっぱりと言われてしまった。堪えきれず涙が溢れて、あたしは子どものように泣きじゃくった。
どうして分かってくれないの、と聞けば
『分かってないのはそっちだ』と言われ。
正直、これじゃあ埒があかないと思った。このまま電話で話をしても仕方ない。
だからあたしはお母さんにはっきりと告げたのだ。
「一度、家に戻るから。だからちゃんと直接話そう」
逃げない、ってみんなと約束したから。