極上お姫様生活―2―【完】
「え?」
「一緒に、逢いに行こう」
今、一緒にって言った?自身の耳を疑いながら、もう一度八木原君に確認する。
「い、一緒に……、行ってくれるんですか?」
ふわりと八木原君の髪があたしの鼻を掠めた。トン、とあたしの肩におでこを乗せて彼は笑う。
「当たり前だろ。お前が頑張ってる時は力を貸してやりてぇし、泣いてる時は抱き締めてやりてぇからな」
「……っ、」
本当は少しだけ心細かった。ほんの少しだけ怖かった。
全てを察していてくれてた八木原君を、あたしはまた好きになる。
八木原君は触れるだけのキスをあたしの唇に落とし、大丈夫、と安心させるように笑った。大きく頷けば、本当に大丈夫な気がしてくる。
みんなといたい。八木原君といたい。
「お母さん、来週には帰るって言ってました」
「そっか。逢えるのは来週以降だな」
うん、と頷く。なるべく早く話せるといいな。
「分かった。じゃあ俺、部屋戻るわ」
「あ、はい。わざわざ来てくれてありがとうございます」
あたしたちはもう一度だけ口付けを交わし、八木原君は名残惜しそうに部屋を出て行った。