極上お姫様生活―2―【完】
何となく憂鬱な日々を過ごし一週間が経った頃、お母さんから連絡が入った。
「八木原君、明日空いてますか?」
放課後、ロッカーに教科書を詰め込んでいる八木原君に声を掛けると、彼は力を込めて無理矢理閉めながら、ん?、と答えた。
ロッカー……可哀想。
「明日は別に予定ないけど、どうした?」
ふぅ、とひと仕事したみたいに汗を拭いながらデートか?なんて茶化してくる。
「デート……はまた今度にしましょう。お母さんから電話があったんです、それで明日家に帰る事になったんですけど」
「おう、やっとこの日がきたか」
八木原君は何だか楽しそうに声を弾ませる。
あたしはこんなに緊張しているのに、どうして余裕そうな顔で笑えるんだろう……?
「八木原君、この状況楽しんでるんですか?」
ちょっとだけムッとして口を尖らせると、八木原君は不思議そうにあたしの顔を覗き込んだ。
「楽しんでるっつーか、ちょっと嬉しいかな」
「嬉しい?」
どういう意味ですか?と首を傾げる。
「どんな理由であれ、お前の母さんに逢える。これでついでに俺の事を認めてもらえれば、一石二鳥じゃね?」