極上お姫様生活―2―【完】
後ろから引き止める声がして、はい、と振り返る。
「頑張れ」
先生は小さく手を振りながら優しく笑う。その輝かしい笑顔に釣られてあたしも微笑んだ。
「はいっ、ありがとうございます!先生も翼と頑張って下さいね!」
と、職員室に響き渡るような大きな声で答えた。最後の最後にとんでもない爆弾発言をしたせいで、この後先生が他の先生方に質問攻めにあった事をあたしは知らない。
「今日は一人で平気か?」
部屋の前まで送ってくれた八木原君が心配そうに尋ねてくる。これ以上迷惑掛けるわけにいかないし、あたしは大丈夫と頷いた。
「明日に備えてさっさと寝ちゃいます」
「……ん」
えへ、とにやけてみせるけど、八木原君は何か思いつめたようにあたしを見たまま動かない。
え……?
「やぎ、―――っ」
顔が近付いてきて反射的にぎゅっと目を瞑る。感触があったのは唇じゃなくて。
「おやすみ」
あたしの前髪をかきあげ、露になったおでこに口付けされる。
「……~っ」
八木原君が部屋に戻り一人になった後も、あたしはその場からしばらく動けなかった。