極上お姫様生活―2―【完】
「……?」
「誰かが外にいる気配がしたからもしかしてと思ったんだ。……やっぱりあんただった」
そう言ってまだボサボサのあたしの頭をくしゃっと乱す。まだ薄暗い廊下で、二つの影が重なった。
あたしたちは廊下の隅に座って他愛のない話をする。
「櫻田君て、やっぱり優しいですよね」
「ん?」
乱された髪を手グシで整えながら、ぼんやり思ったことを口にしてみた。
「最初なんて、我関せずって感じだったじゃないですか。でも今は……すごく優しい」
体育座りをした膝に頭を乗せて櫻田君を見つめる。彼がゴクリと生唾を飲み込んだのが分かった。
「蒼空……あんたは、斎の事―――」
切羽詰った顔をした櫻田君は勢いであたしに迫る。だけどすぐに我に返ったように言葉を詰まらせた。
「いや、何でもない。忘れてくれ」
「…………はい」
櫻田君が言おうとしていた言葉は何となく分かる。でもそれに上手く答えられる自信がなくて……あたしは気付いてないフリをして誤魔化した。
誰が好きかなんて、言えないよ……。
だって櫻田君、今すごく辛そうな表情してるんだもん。
その後、あたしたちは気まずい雰囲気のままお互いに口を開く事もなく。やがて櫻田君はやっぱり眠いから部屋に行く、と、逃げるように部屋に戻ってしまった。