極上お姫様生活―2―【完】
そこで初めて、お母さんは表情を曇らせるように黙り込んだ。
「お母さん、お父さん、あたしは―――」
「許さないって言ったはずよ」
「っ、」
さっきまでとは打って変わって、お母さんは厳しい声であたしの言葉を遮る。ピシャリ言い切られ、空気が凍てつく気がした。
「そ、それでも……あたしは辞めたくないの!みんなと一緒にいたいの!!」
「そんなもの、親を捨てる理由にはならないわ」
お母さんは表情を崩す事なく淡々と言葉を並べていく。カタカタと肩が震えるのを必死で我慢した。
「捨てるってなに?そんな事一言も言ってないじゃない」
「同じ事よ」
チラリお父さんを盗み見る。お父さんは黙って目を瞑ったまま口を開こうとはしなかった。それは、八木原君も同じで。
「ねぇ、お母さん。どうしてそんな悲観的になるの?あたしはただ、学校に通い続けたいって頼んでるだけじゃない。それの何がいけないって言うの?」
泣きそうになって揺らぎ出す声を何とか紡いでいく。
でも本当に分からない。お母さんがどうして頑なに反対するのか。
「学校に通いたいのならまた転校すればいいじゃない。それなら問題ないわ」
「だからそうじゃなくて、そんな事を言う意味が分からないって言ってるの!」
あたしとお母さんの口喧嘩は、収拾がつく気配を見せない。もっと意味のある話し合いをしなきゃいけないのに、止まらなかった。