極上お姫様生活―2―【完】
「この子……中学生の頃に同級生の男の子に騙された事があってね」
ポツリ、胸の内を曝け出すようにお母さんは話し始めた。
あたしと楓汰の事。あたしのトラウマ。
だけどそれはもう過去の話で。楓太とはちゃんと話ししてケジメつけたしもう、引きずってなんかない。
でもそんな事知る由もないお母さんは辛そうに話し続ける。
「蒼空の通っている学校が男の子だらけなんて知ってたら、最初から転校なんてさせなかったわ。あんな酷い事をされたっていうのに……」
そっか。だからお母さんは辞めさせたがってるんだ。あたしが辛い思いをしながら通ってると思ってるから。
絡んだ糸が解けていく気がして、同時に何にも分かっていなかったと後悔する。
「お母さん違うの……!あたし、もうその事は―――」
「須賀 楓汰の事ですよね、全部蒼空から聞いてます」
やんわり遮って八木原君が身を乗り出す。
「聞いてるって……蒼空があなたに話したって言うの?」
お母さんは信じられないと目を見開いた。原因を作ったのは男の子だから、まさか同じ男の彼に話したとは夢にも思ってなかったようだ。
「話したよ。……信じてるもの」
テーブルの下で手を繋ぎ合う。そのおかげで、もう声を震わせる事はなくなった。
「あなたがそんな風に言うなんて……」