極上お姫様生活―2―【完】
「じゃあ今日はもう部屋帰るわ。ここにいたら頭に詰めたもん吹っ飛びそうだし」
八木原君はてきぱきとノートを閉じて帰る準備を始める。それに続いて湊君もふぅ、と息を吐いて立ち上がった。
「お互い頑張ろーな」
別れ際、ポンとあたしの頭に手を置いてにいっと笑う橘君。つられてあたしもにっこり笑った。
「はいっ!」
全員揃って合格したい。
あんなに頑張ったんだから大丈夫だよ。あたしはみんなを信じてる。
「……蒼空」
お茶を片付けていると、扉が開いて遠慮がちに遥登君が顔を覗かせた。
「遥登君?どうしたんですか、忘れ物でも?」
部屋の中には入ってこないで、ただ気まずそうにあたしを見つめるだけの遥登君に違和感を覚える。
「あ、のさ」
「はい」
ぎゅっと拳を握って息を吐いた後、今度はしっかり顔を上げて。
「俺、お前の唇もらうから」