極上お姫様生活―2―【完】
「あ、の……助けてくれてありがとう、です」
掴まれていた手首を擦りながら、未來が俺に近寄る。
「大丈夫?……、」
未來。と呼ぼうと思って躊躇した。彼女は確か、男が嫌いだとか言っていた気がする。
蒼空の知り合いとはいえ、馴れ馴れしく名前で呼ばれたら彼女はどう思うだろう。しかも呼び捨てで。
まぁ、いい気はしないだろうな。
かといって未來の名字を知っているわけでもない。何て声を掛けていいか分からず戸惑っていると、
「あたし、森元未來っていいます。さっきも会いましたよね」
ご丁寧に名乗ってくれた。ありがたい。
「森元、さん。怪我はない?」
「はいっ」
はにかみながら返事をするものの、安心して気が抜けたのかその場にヘタリしゃがみこんでしまう未來。
「怖かったぁ……」
力の抜けた未來を支えるために、俺もしゃがみこむ。カタカタと小刻みに震える肩を見て、うっかり手を置きそうになってしまった。
「っ、…あたし、男の子苦手で……っ」
肩だけじゃない、声も震えてる。