極上お姫様生活―2―【完】
「お待たせ、斎くん」
携帯を片手にきょろきょろしていた未來は、俺を見つけると小走りで駆け寄ってきた。
目が合って、彼女の瞳が腫れてるのを見て、やっぱり泣かしちまったんだと思った。何事もなかったかのように笑う未來が痛々しくて、申し訳なくて仕方ない。
これから俺は、もっと酷い言葉で彼女を傷付けるのだから。
「今日ね、……ううん今日だけじゃない。昨日も一昨日もその前の日もずっと、斎くんの事だけ考えてた」
未來は泣き腫らした目をパチパチと瞬かせながら、僅かに震える声で言葉を紡いだ。目線は、やや下。
「分かってたよ、フラれる事くらい。でも……‘蒼空の代わりなんか必要ない。あいつは、俺の最後の女だ’って、直接言われるより辛かったかも」
あの日、俺は自分の気持ちを偽る事なく未來をフッた。たった一通のメールで、彼女の想いを踏みにじった。
でも、それが誰かを愛するという事なら……曖昧な気持ちじゃないから中途半端な事はしたくなかった。
「……ごめん、」
「謝らないでっ!斎くんのそうゆう一途なとこも好きなんだから」
いっそ嫌ってほしかった。顔も見たくないほど大嫌いに。そうすれば未來が傷付くのは最小限で済むのに。