極上お姫様生活―2―【完】
須賀、楓汰。スガ フウタ
あたしのトラウマの原因を作った張本人で、元彼。
あの日、遊びであたしと付き合って弄んで捨てた男。
中学の時の消し去りたい記憶が鮮明に思い出される。
本当、何で今さら―――。
「―――……い、……おい!」
バチン。
誰かがあたしの顔の前で手を叩く。その音にハッとして、顔を上げれば。
「蒼空、お前……大丈夫かよ」
至極心配そうに眉を下げる八木原君が瞳に映った。
「八木原、君……?」
未來ちゃんが、八木原君を呼ぶからちょっと待ってて。と言っていたのをぼんやり思い出す。
「未來と、仲直りはできたんだよな?」
「はい……ばっちりできました」
あ、だめだ。全然八木原君の顔見れないや。
俯いたまま笑ってみせるけど、これじゃあ何かありましたとわざとらしく言っているようなもので。
でも、顔を見ちゃったらきっと……涙が止まらなくなる。
「おい、蒼空」
いつもより少しだけ低い声で、八木原君があたしを呼ぶ。