極上お姫様生活―2―【完】
「あいつ…っ、」
彼が何を考えているのか分からない。……会いたくなんかない。
「八木原君……」
八木原君を見上げると、彼もあたしをしっかり捉えてそのまま強く抱き締めてくれた。
「大丈夫だ。何があっても、俺が守るから」
そう囁かれるだけで、あんなに震えていた身体から不思議と力が抜ける。うんうんと頷きながら、八木原君の背中に手を回す。
「信じてます、八木原君……」
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「それで、……いきなりそいつからメールがきたんだな?」
携帯の電源を切って鞄の中にしまう。八木原君が手を繋いでくれているだけで、自然と心が落ち着いた。
「はい。アドレス、知らないはずなのに」
それ以前にいきなりメールしてくるなんて……一体何を考えてるのよ。
「で、今更逢いたいなんて言って来たわけだ」
「……はい」
ぎゅ、と握った手に力が込められた。ちらり横を盗み見ると、八木原君の険しい表情が視界に映る。彼は目を細め、苛立ちを隠せない様子で。
「むかつく、」
ボソリ低い声で呟いた。
他人事なのに、あたしのために怒ってくれてるんだね、なんて。こんな状況なのに、つい嬉しくなってしまう自分がいた。
「とりあえず、メアド変えとけ」