極上お姫様生活―2―【完】
「そうします」
変えるならさっさとやってしまおう。と、あたしはさっき切った携帯の電源を再びつけた。少しの読み込みのあと、待ち受け画面の端にメール受信のマークが表示される。
「……!」
一度電源を落としてからまだ何分も経ってないのに……。
14件。
頭の片隅にあった微かな期待が、重いため息とともにどこかへ飛んでいってしまった。
結局彼は自分の都合をあたしに押し付けてるだけ。
一方的にいきなりメールを送って、逢いたいなんて言って、あたしがどんな思いをするかなんて……どうでもいいんだ。
相手が困るって分かってたら、こんな風に何通も送ってこないでしょ。
“逢いたい”“謝りたい”“返事くれ”
まるで感情のない言葉。彼は何を思ってこんなことを書いているのだろう。何を企んでいるのだろう。
「消せ」
「え、」
「読まなくていいから、消せって」
八木原君の声が一層重くなる。あたしは慌てて頷いた。
「っ、はい」
かちゃかちゃと一斉削除する。それでもメールが届く方が早くて追いつかない。
「くそ、何なんだよ……っ!!」
そう八木原君が叫んだときだった。
「―――え」