極上お姫様生活―2―【完】
「そんなに送ってんだから、無視はねぇだろーが」
クラリ眩暈がして、吐き気がして。
でも……目を逸らせない。
目の前であたしに笑いかけている彼―――須賀楓汰から目が逸らせなかった。
「お前に逢いたくて、来ちまった」
すっかり茶色くなった髪があの頃より少し伸びて、何だかとても大人びて見えた。でも少年みたいな笑顔は変わってなくて。
うわ、うわ……どうしよう。
身体が固まっちゃって動けない。口を開けてもパクパク、声にならない声を上げるだけ。
「お前が、蒼空の……」
「あ?何だよ、もしかして蒼空の彼氏?ありえねー」
パタンパタン携帯を閉じたり開いたりしながら、須賀楓汰が近付いてくる。八木原君を睨んでいるけど、彼は迷いなくあたしに足を向けていて。
「久しぶり、すっげぇ綺麗になったな」
彼は無邪気な笑顔でそう言うんだ。まるで昔に何もなかったかのように。
「てめぇ、ふざけたこと抜かしてんじゃねぇぞ」
あたしへと伸ばされた手を八木原君が叩き落とす。須賀楓汰は下へ落ちた手を一瞬見つめ、すぐにギロリ八木原君を睨み付けた。