極上お姫様生活―2―【完】
「分かってんなら尚更、二度と蒼空の前に姿を現すな」
八木原君は見せ付けるようにあたしの手を握り締め、軽く上に持ち上げる。
「無理」
それをまじまじと見た須賀楓汰はだるそうに目を逸らし、即答した。
「俺は……謝りにきたんだ」
「え……、」
がしがしと髪の毛を乱暴に掻きながら、やや上目遣いであたしを見つめる。
「あん時はほんとに悪かった。今さら許してもらえるはずねぇけど……俺は、本気で蒼空が好きだった。もちろん、今も」
さっきまでの苛立った態度の彼はもういない。今、目の前にいるのは……申し訳なさそうに眉を下げて謝る、紛れもなく須賀楓汰で。
「っ、なに……そんなのどうせ嘘に決まって……っ」
「嘘じゃねぇ!あの日からずっと、お前を想い続けてる。……誓うよ、好きだ」
彼の真っ直ぐな瞳に射抜かれた瞬間、あの時の感情がリアルなまでに蘇って。
どばっ、と、涙が溢れてしまった。
耐えてきたなんて嘘。本当はずっと辛くて、悲しくて。
彼がいない世界なんて意味がない。そんな馬鹿なことを思ってしまうほどあたしには彼が、須賀楓汰が必要で。好きで、好きで。
ああ―――やばい。