年下のカノジョ~あの子は高校生~
「おかしなって?」

 案の定、水野が食いついた。

 彼は『夢占いが趣味だ』とか抜かす、ちょっとドリーマーな男性なのだ。
 


 ファンタジーな世界はケーキだけにしておけ!



「ん、んん。
 まぁ、よく覚えてない。
 忘れちまった、ははっ」
 頭をかきながら、引きつる俺。
 
 本当はばっちり記憶に残っていたが、言えるわけないだろう、あんな夢。
 


 笑ってごまかしている俺を怪しんでいたが、水田はそれ以上突っ込むことなく着替えを続けてくれた。


 厨房のシフトは9時出勤の早番。
 これが通常で、間に2時間の休憩を挟む。


 それと、15時出勤の遅番。

 このシフトが交互に組み込まれている。




「三山、先行ってるぞ」
 着替えを終えた水田が出てゆく。

「ああ」 
 コックコートのボタンを留めながら、顔だけそちらに向けて返事をする。 

 
 他の人も既に着替えを済ませて各自の持ち場へと向かったため、残っているのは俺一人。
 

 素早く、壁に貼られた全員分のシフト表に駆け寄り、ある人物の出勤予定を指でたどる。

「えっと・・・・・・。
 やった、今日はバイト入ってるんだ」
 思わず顔が緩む。
 
 俺が気にかけている人と言うのは柏木 由美奈ちゃん、16歳。
 

 11歳も年の離れたホールバイトの女の子。

 今朝の夢に出てきた例の少女だ。
 


 俺が片思いを自覚してから既に3ヶ月ほど経った。



 でも。

 告白する勇気をもてないまま、時間だけが過ぎてゆく毎日。
 

 だって、1回りも年が違うから……。
 

 このままではつらいだけで何も変わらないし、どうにもならないことは重々承知だけれど。

 あまりに好きになりすぎて、玉砕したら立ち直る自信がない。
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