年下のカノジョ~あの子は高校生~
「え?」

―――抱きしめてもいいの?

 俺はおずおずと由美奈ちゃんへと腕を伸ばす。
 
 彼女も腕を伸ばしてくる。




 仔猫を差し出しながら。







「はい。
 三山さんもこの仔を抱っこしたかったんでしょ?」


―――いえ、抱きしめたいのは君のことです。

 とは、口が裂けても言えず・・・・・・。



「う、うん。
 そうなんだ」
 そう言って、苦笑いをした俺は仔猫を受け取った。


 仔猫は俺の手の中でしばらくモソモソと動いていたが、やがて大きくあくびをしたかと思うと、眠ってしまったのだ。


「ふふっ。
 三山さんの手は大きくて安定感があるから、居心地がいいのかも」
 由美奈ちゃんがすやすや眠る仔猫を覗き込む。


 しばらく待ってはみたものの、一向に目を覚ます気配のない仔猫。


 いつ起きるのか分からないし、ましてや無理に起こすのも可哀想なので、どうしたものかと困ってしまった。
 


 すると、由美奈ちゃんが店員さんを呼びに行ってくれた。

「あら、珍しい。
 寝ちゃったなんて」
 店員は俺の腕からそっと仔猫を取り上げ、静かにケージに戻した。


「この猫は神経質なところがあって、人の手の中で眠るなんてことなかったんですよ。 お客様の腕の中がよほど落ち着く場所なんでしょうね」

 ぺこりと頭を下げた店員は、レジへと戻って行った。




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