年下のカノジョ~あの子は高校生~
 繰り返しているうちに、震えが小さくなってゆく。


「ゆっくり深呼吸してごらん」

 俺の胸の中で、スー、ハーという空気音が聞こえてくる。
 


 何度目かの深呼吸のあと、ようやく由美奈ちゃんが顔を上げた。



 真っ赤になった瞳と、涙のあとが残る頬。

 すがるように見上げてくる視線。



 全身で俺を頼ってくれているのが分かって、すごく嬉しかった。




「柏木さん、大丈夫?」
 優しく、優しく微笑みかける。

「もう平気です。
 ごめんなさい、迷惑かけて」
 濡れた頬を手でぬぐう由美奈ちゃん。

「ううん、ぜんぜん迷惑じゃないよ」

 俺は背中においていた手をどかし、少しだけ彼女から離れた。



 由美奈ちゃんは、はぁ、と大きく息を吐く。

「高校生にもなって雷が怖いなんて、変ですよね」

「そんなことないよ」

 俺は首を横に振る。


「いくつになっても怖いものは怖いもん。
 俺なんてさ、いまだに歯を削る音が怖くてね。
 治療のたびに失神しそうになるんだよ。
 もうすぐ30なのに、情けないよねぇ」


 ちょっとおどけて言うと、由美奈ちゃんがくすっと笑った。



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