年下のカノジョ~あの子は高校生~
―――へぇ、正式採用かぁ。

 みんなにならって俺も手を叩くが、実はそんなに関心を寄せるほどでもなかったりする。


 そんな俺の横に座る女性たちが呟きを洩らす。

「由美奈、一生懸命だったもんなぁ」

「そうよね。まじめだったわよねぇ」

 何やら訳知り顔の2人。


「どういうことですか?」
 拍手の手を止めて、俺は尋ねた。

「由美奈ってば大人しそうに見えて、結構負けず嫌いなんですよ。
 “ミスをするわけにはいかないから”って、私にすっごく細かいところまで聞いてきたりとか」

 田口さんと高橋さんが目を見合わせる。

「そうそう。
 事務所に残ってメニューを暗記していたこともあったわね」

 うんうん、と田口さんがうなずいている。


「そうだったんですか。
 頑張っていたんですね、柏木さん」


 責任感があって頑張り屋さんか。

 いい子だなぁ。

 うん、いい子、いい子。



「でも、普段はぽやーってしてます。
 そこが可愛いんですけどね」

 どうやら田口さんにとって、柏木さんは妹分みたいな存在らしい。






「三山さぁん。飲んれましゅかぁ?」

 まだ30分しか経っていないと言うのに、既に真っ赤な顔をしてろれつの怪しい赤川が俺の背後から抱きついてきた。


「うっ、重いって」
 奴の腕を引っ張ってはがそうとするが、しっかりと回された腕はなかなか解けない。

 へらへら笑うばかりで、ちっとも動こうとしない赤川の腕をぱしぱしと叩く。



「なんなんだよ、もう。
 どけよ」



 うっとおしいし、重いし。


 酒を飲む俺の邪魔をするなよ。

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