年下のカノジョ~あの子は高校生~
「戸締りご苦労様。
 柏木さん、あなたの接客はお客様にも評判いいわよ。
 この調子でお願いね」
 玲子さんは由美奈ちゃんから鍵を受け取るために、優雅な仕草ですっと右手を差し出す。




 由美奈ちゃんはちらりと俺のほうを見る。


―――ああ、もう。
   由美奈ちゃんから鍵を受け取るのは俺の役目なのにぃ!!

 
 でも。

 叔母さんが手を差し出した以上はどうすることもできない。


 由美奈ちゃんは静かにその手に鍵を乗せる。


「はい、頑張ります。
 あの・・・・・・、じゃぁ、お疲れ様でした」
 由美奈ちゃんは俺と叔母さんの顔を交互に見ながら、頭を下げる。


「お疲れ様。
 真っ直ぐ家に帰るのよ」
 うっとりするような微笑みを口元に浮かべて、由美奈ちゃんに声をかける叔母さん。


「お疲れ。
 気をつけてね」
 
 表面では普通にしているのだが、内心は未練たらたらの俺。



―――いつもならこの後、二人でおしゃべりするんだけどなぁ・・・・・・。
 

 由美奈ちゃんはちょっとだけ俺を見て、厨房を出て行く。



 遠ざかる彼女の足音だけが耳に残った。
< 344 / 718 >

この作品をシェア

pagetop