年下のカノジョ~あの子は高校生~
「いえ、ちょっとびっくりしただけですから」
 ほんのり頬を赤らめている柏木さん。


「染みにならないうちに拭いておきますね」
 にっこり笑って、ビールのこぼれた畳を拭き始めた。





「この位でもういいかな」
 布巾を2枚使ってしっかり拭いた柏木さんが、立ち上がった。

「他の方にもお酌してきます」
 ぺこりと頭を下げて、柏木さんは少し離れた席にいる水田に近づいていった。





「なんだ。
 俺にだけお酌しに来た訳じゃないんだ・・・・・・」

 柏木さんの後姿を見て、ポツリと呟きが漏れる。



「―――え?
 何言ってんだ、俺?」

 自分で自分の耳を疑った。




 別にいいではないか。

 柏木さんが誰にお酌しても。



―ーーなのに、何で胸の奥がざわつくんだ?



「はははっ、酔ったかな」



 この程度の酒の量で自分が酔うはずないことは、分かっている。

 よく分かっている。


 
 だけど、この胸騒ぎの原因は分からなかった。




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