年下のカノジョ~あの子は高校生~
 3時間にも及んだ宴会も終わり、みんな店の外に出て、それぞれの家路につく。


「う゛~、飲みすぎたかもぉ」

 今日は飲み放題ということで、元を取ろうとついつい浴びるようにビールを飲み続けてしまった。

 親父譲りの酒に強い体質のおかげで悪酔いすることはないが、やたらに眠い。



「大丈夫かい、正和君」
 どこかぼんやりしている俺を心配して、公介叔父さんが声をかけてきた。


「楽しくって、飲みすぎてしまいましたよ」
 酔い覚ましにと、パンパンと顔をはたく俺。


「その割にはちっとも顔が赤くなっていないね。
 君のお父さんと同じだ」
 そう言う叔父さんの顔はほんのり赤くなっている。



「そうですね。
 顔立ち以外は、まんま親父似ですから」

「三山の家系はみんな酒が強いのかねぇ。
 ウチの奥さんはザルを通り越して枠だよ」


 俺以上に飲んでいたはずの叔母さんは、一切そんなことを感じさせず、きびきびとタクシーの手配をしている。


 ちなみに、たくさん酒を飲む人の事を『ザル』と言うのだ。

 野菜などの水切りに使うあのザル。



 ボウルと違って、ザルにお酒をついでも、溜まらないでどんどん流れていくだろ?

 それが次々と酒を空ける様子に似ているからなんだ。


 そして、ザルの更に上を行く人の事を『枠』と言う。

 ザルであれば多少なりとも引っかかるが、枠しかないと引っかかるどころがないから。

 そのぐらい勢いよく酒を飲む人の事を指す。
 


「叔母さんは親父よりも強いかもしれませんよぉ」

 大の男2人で忍び笑いをしていると、
「あー。
 今、私の悪口言ってたでしょ?」
 あれほど飲んでいたにもかかわらず、顔色はおろか、シラフの時とまったく変わらない言動の叔母がいつの間にか傍に立っていた。


「何、疑っているんですか。
 そんなこと言ってませんって」
 ねぇ、と叔父さんに同意を求める。

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