年下のカノジョ~あの子は高校生~
「だって・・・・・・」
 母親が叔母たちや義姉と目を見合わせている。


「正和君、こんなにかっこいいのに」

「背も高いし」

「料理も出来るし」

 4人の女性が“ねぇ”とうなづきあう。



「あははっ。
 俺、そんなにいい男じゃないですし、モテないですよ。
 彼女そっちのけで、仕事を優先しちゃうようなヒドイ男です」


「それって、仕事ほど彼女のことが大切に思えなかったからじゃないの?」
 俺と兄貴の間の席に腰を下ろしながら、里香義姉さんが聞いてくる。


「そうですかねぇ。
 う~ん」

 当時付き合っていた彼女のことを思い出す。
 

 相手のことはもちろん好きであったが、毎日会わなくても寂しいと感じたことはなかった。

 休日は二人でどこかに出掛けたりするのではなく、仕事で疲れた体をゆっくり休めたいなぁって思っていた。



「そう言われれば、そうだったかもしれないです」


 あの頃は早く一人前になりたくて。

 公介叔父さんに追いつきたくて。


 がむしゃらに仕事をしていた。
 

 付き合っていた彼女は、そんな俺を応援してくれていた。


 でも。

 そんな日々が長いこと続くと、『あなたが頑張る姿は素敵だけど、寂しい私の気持ちも分かって欲しかった』と、別れを切り出されてしまった。
 


 彼女の言い分はもっともだった。


 だけど。

 あの時の俺は『はい、そうですか』と言って、仕事を手放す気にはならなかった。


 それゆえの別れ。



「別れてもそんなに後悔はしなかったなぁ」


 負け惜しみなどではない。

 別れて数日は俺の心に寂しさがあったが、すぐに仕事に没頭する日々に戻り、寂しいと思う気持ちはあっという間に消え去っていった。

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