年下のカノジョ~あの子は高校生~
 マンションの駐車場を出たところで、田辺さんが向こうから歩いてきた。




 俺と目が合った彼女が手を振ってくる。

 これでは素通りする訳にも行かない。



 車を寄せて窓を開けた。

「おはようございます、田辺さん。
 これから出勤ですか?」

「ええ。
 本当はお休みだったんですけど。
 婦長から“書類の整理を手伝って欲しい”と、泣きつかれまして。
 しかたなく」
 頬に手を当てて、ため息。


「田辺さんは仕事が出来るから。
 みんなが頼りにするんでしょう」


「あんまり嬉しくないですけどね。
 三山さんはどこかにお出かけですか?」


「はい。
 え、えっと、実家に。
“パスタが食べたい”と、親に呼び出されまして」 
 



『彼女とデートなんです』と、言ってしまおうかと一瞬迷った。




 でも、やめた。

 あえて言うことでもないと思ったから。


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