年下のカノジョ~あの子は高校生~
「柏木さん?」

 近づいてゆくと、確かにその少女は柏木さんだった。


「あ、三山さんだ。
 あけましておめでとうございます」
 慌てて自転車から降りて、俺に頭を下げる。

「おめでと」
 俺も軽く頭を下げた。


「三山さんの家って、この辺でしたっけ?」
 首を傾げて尋ねてきた。

 そういう幼いしぐさが、柏木さんにはよく似合っている。



「いや、実家から帰るところ」
 指差して、実家の位置を教えてあげた。

「そういう柏木さんは?」

「私はこの近くに住んでますよ」


―――そういえば、田口さんが柏木さんにバイトの電話をする時にこの辺に住んでるって言ってたっけ。



「そうだったんだ。
 でも、全然会ったことないよね」


 一人暮らしを始める3年前まで、俺は実家から職場に通っていたのに、柏木さんの姿は一度も目にしたことがない。


「ふふっ。
 私、去年引っ越してきたんです。
 前は隣の町に住んでましたから、会うことないはずですよ」
 逆光に陰る彼女の顔が微笑んだ。

「そっか。
 ・・・・・・ところで、急いでいたみたいだけど。
 どこか行くところなの?」


 我ながら間抜けな質問だ。

 柏木さんがどこに行ったって、いいではないか。


 なのに、なんだか聞いてみたくなった。

 なんでだろう?


 素直な柏木さんは、俺のどうでもいい問いかけに丁寧な答えを返してくれた。

「弟が急にカレーが食べたいって言い出したんです。
 お父さんもお母さんもお酒飲んじゃったから運転できないので、私がこの先のスーパーまで買い出しに」

「結構な距離があるよね。
 自転車で大丈夫?」


―――大丈夫ってなにが?
   何の心配をしてるんだよ、俺。
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