年下のカノジョ~あの子は高校生~

8】笑顔に惹かれる

 ピピピピピッ。

 ピピピピピッ。


「うう~ん」
 俺は目覚ましの音と共にベッドを抜け出し、大きく背伸びをする。


 いよいよ今日から仕事が始まる。

 とは言っても、昨日店に仕込みに行ってるけどね。


 ソースの類はじっくり煮込んで一晩置かないと、味がなじまない物があるからな。



 チーフコックともなれば、そのくらい率先して動かないと下の者に示しがつかないから、当然の事である。

 もちろん叔父さんも、昨日店に来ていた。



 顔を洗って着替えを済ませ、キッチンに向かった。

 実家でもらってきた餅を3個焼いて、豆腐とねぎの味噌汁を作って朝食を取る。



「一人暮らしの俺に、こんなにくれなくてもいいのになぁ」

 食器棚の前に置かれた餅の入った大振りのタッパーに目をやる。


 せっかくだから持って行きなさい、と母さんから半ば強制的に押し付けられた切り餅はざっと30個。

 これだけあると、食べ終える前にカビが生えてしまう。


 水に浸けておくとカビの発生は防げるが。

 焼き上がりが柔らかくなり過ぎて、俺は好きではない。



「毎日食べるのも飽きるし、捨てるのはもったいないし。
 ・・・・・・店に持っていって、まかないにするか?
 うん、そうしよう」

 もぐもぐと磯辺巻きをほおばりながら、餅の行く先を決めた。





 新年の営業はまだ仕事初めにならない職場も多いので、混みあう事もなく、早めにランチの営業を終えた。


 正月は家庭のあるパートさんたちが休みを取りたがるので、冬休み中はバイトが多い。

 もちろん柏木さんもいる。


「今日は食べ盛りの男子バイトがいるから、全部焼いても残らないだろうな」

 俺は一口大に切った餅をシートを敷いた天板に並べ、オーブンに入れた。


 そしてパスタの準備に取り掛かる。
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