年下のカノジョ~あの子は高校生~
―――今日の正和さんは、遅番で出勤かぁ。


 私は『三山』と書かれた文字を、指でそっと触れる。


 自分の手が震えている事に気がついた。
 



 店長も、山岸さんも味方だけど、堂々とした田辺さんを前にすると・・・・・・。



「やっぱり、怖いな」

 ポツリとこぼす。



 きっと田辺さんは今夜も来店するに違いない。



 さっき、2人が言ってた。

『最近の田辺さんを見ていると、なんだか恐怖すら感じる』と。
 



 田辺さんは何を考えているんだろう。 
 
 整った大人の瞳で睨まれると、私はどうしたらいいのか分からなくなってしまう。
 


 正和さんを失いたくない。


 彼と別れるつもりなんて、これっぽもない。
 



 だけど。

 子供の私に何が出来るんだろう。




「正和さん・・・・・・」


 1人きりの更衣室に、彼の名前が静かに響いた。
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