年下のカノジョ~あの子は高校生~
「そうだよ。
 あ、なんか問題があったとか?」



 違います、という意味で柏木さんは首を横に振る。

「お客様が美味しいって言ってましたよ。
 素材はもちろんだけど、焼き方が絶妙だって」


「そ、そう?」

 何気なく返事をしたけれど、内心は大喜び。

 こういうのはコック冥利だ。

 お客様の『美味しいよ』という一言が、励みになる。



「お客様からの美味しいって言葉、すごく嬉しいですよねぇ。
 ま、私が作ったわけじゃないですけど」
 そう言って、はにかみながらペロッと舌を出している。

 その笑顔を見ただけで、なんだか楽しくて、嬉しくて、心の奥がほっこり温かくなって。


―――これってやっぱり、柏木さんのことが好きだってことになるのか?


 ちょ、ちょっと待てよ。

 俺と彼女は11才も年が違うんだぞ。

 普通有り得ないだろ。



 だって、俺が成人式の時に、柏木さんはまだランドセル背負って小学校に通ってたんだぜ?

 それだけ歳が離れてる相手に恋愛感情を抱くなんて・・・・・・。




「どうかしちゃったのかなぁ、俺」

 呟きがポロリと漏れた。


「え?
 何ですか?」
 柏木さんが不思議な顔をして尋ねてくる。



―――いけねっ。
   1人じゃなかったんだ!!


「あ、いや・・・・・・。
 別に」



 無意識の独り言を聞かれるほど恥ずかしいものはない。

 俺の額にドッと汗が噴き出す。



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