年下のカノジョ~あの子は高校生~
「か、柏木さん。
 えと、そのぉ」

 無意識の行動になんと言い訳すればいいのか分からず、うろたえる。



 すると、
「頭は痛くないです。
 痛むのは摑まれた左の手首だけですから」
 と、あえて深く突っ込むことなくにっこり笑ってくれた。


 天然なのか、俺に気を遣ってそう答えたのか判別できないが、とりあえずは悪印象ではなかったようだ。


―――本当にどうしちゃったんだよ、俺。 



「そっか、頭は痛くないんだね。
 わ、分かった」
 微笑もうとするが、顔が引きつってかなりぎこちない笑顔となる。


「帰るんだよね。
 大通りに出るまで一緒に行くよ」

「もう大丈夫だと思いますよ」


 周りを見回すと、確かにあいつらの姿はもうない。



「でも、一応念のため。
 女の子なんだし、何かあってからだと遅いから。
 さ、行こう」
 そう言って俺たちは歩き出した。


 明かりのない薄暗い小道。

 ほんの30秒ほどの距離だったけれど、柏木さんと並んで歩くことが心地よかった。





「わざわざありがとうございました」
 人も車も行き交う明るい通りに出て、彼女は深々と頭を下げた。


「どういたしまして。
 大事になる前でよかった。
 ファックスし忘れた甲斐があったよ、なんてね」


 俺の冗談に柏木さんが小さく笑う。
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