年下のカノジョ~あの子は高校生~
 すっきりしない頭と体を熱めのシャワーで目覚めさせる。
 
 どうせ自分しかいないのだからと、トランクス一枚で家の中をうろつく俺。

「こうやって堂々とだらしない格好が出来るのは、一人暮らしの特権だよなぁ」
 
 ガシガシとタオルで頭を拭きながらリビングにやってくる。

 シャワーのおかげで少しは気分が浮上した。


 カーテンの隙間から入ってくる陽射しがまぶしい。

「すっかり初夏だな。
 ほんの少し前まで春だったのに」
 目を細めて窓の外を見た。
 

 五月晴れの青い空、白い雲。

――――俺の心がこんなふうに晴れ渡るのはいつなんだろう・・・・・・。

 浮上したはずなのに、知らずため息がこぼれた。



 着替えを済ませた俺は、キッチンでお湯を沸かす。
 

 大の紅茶好きな俺は、朝は必ず濃い目のアールグレイを飲むのが習慣だ。
 
 色も風味も強いアールグレイはよくアイスティーに用いられるけど、この渋みが寝起きの体にはちょうどいい。
 

 冷蔵庫を開け、玉子とピザ用チーズを取り出した。

「今朝のメニューは・・・・・・、じゃじゃん。
 オムレツに決定!」
 
 独り言炸裂中。
 
 更に鼻歌も織り交ぜながら、手早くチーズオムレツを作り上げる。


 その横のコンロで昨夜作った野菜たっぷりのコンソメスープを温める。

 そこにトマトソースやベーコン、バターを加え、最後にご飯を入れて即席リゾットにした。
 

 テーブルには絶妙な感じで半熟に仕上げたのオムレツ、暖かい湯気の立つリゾットと紅茶が並んだ。
 


 一人暮らしの男が作るには立派な朝食だって?


 ハハハ、それは俺の仕事と関係があるからだ。

 このくらいの料理はまさに『朝めし前』なのだ。
 


 俺、こと三山 正和はレストラン『シェ・カミノ』のチーフコック。

 叔母夫婦が経営するちょっと小じゃれたレストランで6年前から働いている。


 その前にも他の店でコックをしていたから、料理歴はざっと9年。
 



 料理全般は和食でも洋食でもこなすけれど。

 デザート関係はそれほど・・・・・・というより、まったく得意ではない。

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