年下のカノジョ~あの子は高校生~
「笑ったりしてごめんね。
 ・・・・・・そっか、そんな理由があったんだ。
 それならさ」



 俺はひそかに考えていたことを口にした。

「もしよかったら・・・・・・、俺が連れて行ってあげようか?」



 何の他意もないように、下心など微塵も感じさせないように、できる限りさらりと言う。



 だけど。

 緊張で顔が自然と引きつってしまう。



 少し不自然かもしれないけど、慌てて頬杖を付いた。




―――言っちゃったよぉ!!

 はたから見ればなんて事のないセリフだけど、俺の心臓は激しく音を立てている。


 頬に触れている手の平にじっとり汗がにじむのを感じた。



―――自然に言えてたか?



―――うん、大丈夫なはずだ。
 

 自分では上手に誘えたつもりだけど、由美奈ちゃんは何も言ってこない。

 俺たちの間に重い沈黙が流れる。





―――もしかして、失敗?!
 
 サーっと血の引く音が聞こえたような気がした。


 そんなに親しい間柄でもないのに(今の俺たちは単なる“同じ職場で働いている”という関係でしかない)、こんな軽い調子で誘ってしまっては、逆に『お調子者』として嫌われてしまうのではないか?



―――ま、まずいっ!
   早く訂正しないと!!



 由美奈ちゃんへの気持ちはけっして軽いものではないけど、自分の軽率な行動を反省した俺は急いで彼女を見上げた。

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