恋衣〜あなたとずっと一緒に居たくて〜
「 あの…。 」


その男性が私に話しかけてきた。


「 はい? 」


私はずっとこの男性の手を見つめていたことに、
声をかけられてハッとしてしまった。
見つめていたことがバレたのかな?とね。


「 この二冊で悩んでいるんだけど、
姪への入学祝にしようと思っているんだけど…
どうもよくわからなくって、
キミも辞典で悩んでいるみたいだったから…。 」


照れくさそうに笑っている男性が、
年上のはずだけど可愛く思えた。

男性の言葉に
店員さんに聞いたらいいのに…
とも思ったけど


「 その二冊なら、
私はこちらが好きですね。
去年私も甥へプレゼントしたんですよ。
ちゃんと使ってくれていて嬉しいですよね? 」


この男性は
私が選んだのをペラペラとめくって考えていた。

二人して同じ国語辞典をペラペラしていたことに
お互いが気がついて笑ってしまったけど。


「 ありがとう、
これにするね。 」


私に一礼をしてレジの方へ向かって歩いて行った。
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