アナグマさんの動物記【Cat】
一見辛そうな、実にアクロバティックな体勢で毛繕いに夢中になっているチョコレート猫を見て、アナグマが、「あ、メスだね」と呟く。
ディーは口許を引き攣らせながら、続きを促した。
「た、タビーっていうのは?」
「縞模様のことだよ。猫の模様の種類。一色で模様のない猫をソリッド・カラー、二色をバイ・カラー、いわゆるトラ猫を、タビーっていってね。バイ・カラー、なおかつ白くない部分に縞模様の入った猫のことを、タビー&ホワイトっていうんだ」
「へぇ……猫の模様にもちゃんと名前があるんですね」
「そりゃそうだよ。なんにでも名前はある。猫にも町にも、人にだって」
にこりと笑って言ったアナグマの言葉に、ディーはなにか、俊巡する仕草を見せる。
そして、不意に立ち上がると、言った。
「そうだ、名前……名前決めなくちゃですよ」
「名前かい? そうだね……何がいい?」
「僕が決めていいんですか?」
「君が拾った猫でしょう。名前をつけて買うからには、責任を持って世話をしないといけないよ」