アナグマさんの動物記【Cat】
「アナグマさん、すいませんが、タオルを持ってきてくれませんか?」
背が高く柔和な顔付きの、――アナグマと呼ばれた男は、目を丸くしながら、再び奥へと引っ込んだ。
ディーが、仕える主人を使ったことに驚いているのではない。
そんなのは今さらだし、だいたい、主従とは名ばかりな二人だ。
彼は、そんなことに驚いたのではなかった。
ディーが手に抱えていたものに、驚いたのだ。
やがて戻って来たアナグマは、タオルを右手に、左手には、小皿に入ったミルクを持っていた。
「あ、ありがとうございます! ミルクまで」
「まったく、ディーは……なんでもかんでも拾ってきて」
「む……なんでもは拾ってません。持てる重さのものだけです」
「そもそも、その基準が可笑しいでしょ」